2024年のSDGs活動まとめ

活動報告

ご無沙汰しております。川北輝です。SDGsサイトの更新がかなり遅れてしまいましたが、2024年もSDGsに取り組んでいます。相変わらず、作品制作、研究、教育を循環させる日々を過ごしていますが、最近ではSDGsに関するプロジェクトのお誘いをいただくことが増えてきました。

また余裕のあるときに、個別に活動記事も書いていきたいのですが、ひとまず2024年に取り組んだSDGs関連の活動をまとめていきます。

2024年もありがとうございました

前回は年度でまとめていたのですが、3月は一番忙しいため年末にまとめることにしました。

今年もSDGsの「すべての人に健康と福祉を」と「質の高い教育をみんなに」に取り組みました。今までの活動と違って、今年は学生さん (特にゼミ生) と一緒に活動することが多かったです。自分なりに、「SDGs×アート-研究-教育」の循環に取り組んだ一年でした。振り返っていきます。

1月 徳島に関する作品の展示

今年は四国や九州、東北を中心に各地で「地域ならでは」のものを感じて、作品制作に落とし込んでいきました。特に徳島が好きで、海の景色も良いし、ご飯もおいしくて最高です。昨年からプライベートでも何度も訪れ、メディア・テクノロジーと組み合わせたらどのような表現ができるかなぁと考えていました。

実際に作品をつくり、「第三回デジタルとくしま大賞 (徳島県主催)」に応募したところ、大賞と港産業 ロボット・DX推進賞をいただくことができました。

1月26日に表彰式とシンポジウムがあったのですが、その際「アスティとくしま」で作品も展示してくださり、嬉しかったです。地域とテクノロジー、特に生成AIとのかかわり方について考えるきっかけになればと思っています。

3月 SDGsのコンテスト

昨年に引き続き、今年も実行委員として携わらせていただいた「第4回SDGs『誰ひとり取り残さない』作文・小論文 / クリエイティブ コンテスト (野毛坂グローカル主催)」の表彰式がありました。

皆さん「誰一人取り残さない/取り残されないとは何か」を個々の体験にもとづきながら考察されていて、私自身も拝見しながらいろいろなことを考えることができました。クリエイティブな作品も表現豊かで、インパクトがありました。

現在、第5回のコンテストも開催されています。自身の思いを発信したい! という方はよければ応募してみてください。

4月 M-SGEの研究発表

2023年度笹川科学研究奨励賞 (日本科学協会, 日本財団) を受賞し、東京で研究内容のポスター発表と口頭発表を行いました。

北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) で行っていた研究の一つで、メタバース上でアバターを通じて構成的グループ・エンカウンターというグループセラピー (心の教育として用いられる) を行いました。Metaverse-Based Structured Group Encounterの略称でM-SGEと呼んでいます。

ファーストステップの検証ですが、さまざまな方から応援の声もいただき、「すべての人に健康と福祉を」につながる大切な研究だと実感しています。国際会議の論文はGoogle Scholar等から読むことができるので、ご興味のある方は読んでいただけると幸いです!

この研究に関しては、株式会社セルバさんのインタビュー企画「CAREER CRAFT (キャリアクラフト)」の前編の中でもお話させていただきました。

6月 画像生成AIと悩み相談に関する研究発表

九州産業大学で開催された「日本デザイン学会 第71回春季研究発表大会」で、「画像生成 AIによる話しやすいアバターのデザイン」の研究を発表しました。

この研究は、日本私立学校振興・共済事業団から研究助成を受けて進めているもので、これまでのカジュアルカウンセリングシステムの研究を踏まえて、ユーザーが相談しやすいアバターの外見デザインについて調べています。特に、画像生成AIが生成したさまざまな表現の違い (アニメチックかフォトリアルかなど) に対する感性を検証しています。

発表では、予備調査の結果を報告しました。現在も調査を続けているので、先述のM-SGEの研究と合わせて、「すべての人に健康と福祉を」につなげていきたいです。

今後、論文にまとめていきます。

8月 メディアアート入門の展示会

松山東雲女子大学・短期大学の社会人講座「メディアアート入門」を受講した学生さんのメディアアート作品の展示を行いました。

この講座では10代~60代までの幅広い年代の方が参加してくださり、メディアアートの楽しさを共有することができました。

内容としては、
第1回 メディアアートの概要と作品紹介
第2回 メディアアートの方法論
第3回 生成AIとデザインソフトウェアを用いた画像作品
第4回 生成AIとデザインソフトウェアを用いた映像作品
第5回 3DCG作品①
第6回 3DCG作品②
第7回 画像、映像、3DCG作品のまとめ
第8回 メディアアートの展示
という流れです。

実際の体験レポートはこちらからご覧いただけます。前編・後編に分けて、丁寧に掘り下げてくださっています。

基本的に毎週1コマ90分ですが、受講者によっては持ち帰って作品をつくっていました。第8回目にメディアアートの展示会を行うので、わりとハードスケジュールだと思います。しかし皆さん、第6回までに毎週1作品はつくりあげていて、第7回+持ち帰りで展示用のオリジナル作品をつくることができていました。

初心者向けの講座なので複雑なプログラミングは避けて、PowerPoint、CANVA (グラフィックデザインソフト)、Blender (3DCGソフト)、文章生成AI、画像生成AI、音楽生成AI、映像編集ソフトなどのツールを用いています。

「芸術とは」や「メディアアートとは」、「世界観とは」などの講義から始まり、実際に手を動かして作品をつくる演習を行いました。

SDGsで「質の高い教育をみんなに」の達成を目指す上で、デジタルデバイド (情報格差) の問題は深刻だと考えています。本講座をきっかけに、さまざまなバックグラウンドを持つ方々にメディアアートの知識やスキルを伝えるためにはどうすれば良いのか、私自身より深く考えることができました。

8月と9月 岩手県の小学校と中学校でワークショップ

アーティストが地域に滞在して作品制作等を行うアーティスト・イン・レジデンス (AIR) プログラムの「三陸AIR」に採択されて、岩手県宮古市に滞在しました。

メディアアーティストとして、宮古市内の小学校で「生成AIでコラージュ作品をつくろう」、中学校で「メディアアートと未来の映像表現」のワークショップを行いました。

その他、愛媛県内でも出張講義の一環として、「データサイエンス入門」、「地域をテーマとしたメディアアート制作」、「メディアアート作品をつくろう」などを各高校で実施しました。

メディアアートのワークショップは講師としても楽しいので今後も続けたいです。先日は大学のデータ分析の講義でサイアノタイプもつくりました (メインは実施前後で感性評価をするという統計の内容です)

学生さんの作品

9月 ボトルキャップアートの受賞と展示

2年生のゼミ生と一緒に制作した「SDGsお茶亀~キャップでつなぐ海の命」が、「ボトルキャップでABCプロジェクト~2024 ボトルキャップでアート!!!」で審査員特別賞 (ビーチ賞) を受賞し、9月3日から9月19日まで、神奈川県川崎市のカルッツかわさき1Fプレイルームで展示されました。

この作品は、海から拾い集めたボトルキャップなど、不要になったものを洗浄してつくったものです。「アップサイクルをテーマにしたアート作品をつくりたい」というゼミ生の声から始まり、実際に作品をつくるだけではなく、「家で不要になるものは何か」、「アップサイクルの認知度」なども定量的・定性的に調査しています。

ゼミ生の発表資料より掲載, 質的な評価をまとめている

9月と10月 心理系記事の監修

心理系メディアの悩ミカタさんで、記事の監修者として携わらせていただきました。実際に監修したのは下記の3つの記事です。

公認心理師、臨床心理修士 (専門職) として記事の執筆のオファーもいただきましたが、現在のワーク量を考えるとどうしても執筆まで手が回らず、なくなく断念しました。

しかし、メンタルヘルスの観点から「すべての人に健康と福祉を」と「質の高い教育をみんなに」を達成する上では、メディア等を通じて心の健康について発信することも必要だと考えていますので、余裕のできたときに書いていきたいです。

12月 メディアアートと感性 ―3DCGの世界― の終了

2024年前学期は先述の「メディアアート入門」を社会人講座で担当しましたが、後期は「メディアアートと感性 ―3DCGの世界―」を担当しました。

はじめて3DCGを触る方を対象に、Blenderを使って表現をしたり、感性工学の手法を用いて評価・リデザインしたりする講座です。

内容としては、
第1回 アートと感性工学
第2回 感性の可視化
第3回 3DCG: キャラクター制作 (演習)
第4回 3DCG: 空間制作 (演習)
第5回 3DCG: オリジナル作品① (演習)
第6回 感性評価 (演習)
第7回 3DCG: オリジナル作品② (演習)
第8回 まとめ: メディアアートと感性工学
という流れです。

最近ではBlenderの使い方の動画がYoutube等にたくさんあって、「質の高い教育をみんなに」に貢献してくれています。本講座では、スキルの習得のみならず、感性評価とAIの定性的評価にもとづくフィードバックとリデザインに着目して進めました。

最終的には簡易的な講評を行いました。皆さんとても素晴らしい作品をつくっていました。

12月 バーチャル学会 2024での研究発表

1年生のゼミ生と新潟に関するVRシリアスゲームコンテンツを開発し、それをまとめてバーチャル学会2024で発表しました。

バーチャル学会2024でゼミ生がポスター発表・口頭発表を行った際の様子

前期に「マルチメディア演習」というBlenderやUnityを使ってアイデアを具現化してオリジナル作品をつくる授業をしたのですが、それを受講してくれたゼミ生が果物や錦鯉、たらい舟 (新潟の伝統的な舟) などをデザインしてくれました。

まだ1年生ながら、世界遺産に登録が決まった佐渡島の金山に着目し、新潟の魅力を知ってもらうコンテンツをつくったのが素晴らしいです。こちらも地域とテクノロジーについて考えるきっかけになれば嬉しく思います。

実際にコンテンツの評価を行い、ブラッシュアップした研究は来年の情報処理学会で報告予定です。

12月 第二回インフォメーション・ヘルスアワードで受賞

1年生のゼミ生と取り組んだ情報的健康に関する取り組みが「第2回インフォメーション・ヘルスアワード (インフォメーション・ヘルスAWARD 2024) (NHK財団主催)」で特別賞を受賞しました。

これまでのカジュアルカウンセリングシステムの研究を踏まえて議論し、最終的に「心の健康を高める10代向けのSNSアバターシステム」を提案しました。ゼミ生が3DCGでデザインしたキャラクターが可愛らしいです。

情報的健康はまさに今の社会で求められている大切な概念です。テクノロジーの発展で人々の暮らしは「便利」にはなっていますが、一方で「せわしなく」なっているとも感じます。改めて、情報と心の健康について考え、形にしていく必要があると実感しました。

SDGsに関して 2025年の抱負とメディアアート

今年はメディアアートを通じてSDGsについて考え、気づかされることの多い一年だったと感じています。来年はもっとアウトプットを増やしていきたいです。

直近では、1月に結婚式を挙げる (かつ来場者は子どもたちが多い) ので子どもから大人まで楽しめるメディアアートは何だろうかと試行錯誤しています。

また、2月には岩手県宮古市でメディアアートの展覧会があります。「川北輝のメディアアート展 in MIYAKO」という名前をつけさせていただきました。

メディアアートのポスター

こちらもメインは小中高生ですが、子どもから大人まで楽しむことができる展示に仕上げます。ぜひ見に来ていただけると嬉しいです! 宮古の川や海などの豊かな自然とメディアアートの表現をお楽しみください。

1月8日 (水) からチケットの販売が開始されます。詳細はこちらをご覧いただけると幸いです。

展覧会に合わせて、無料イベントを1日1つ開催します。アーティストトークの「デジタルで感じる宮古の魅力ー子どもの感性を育む地域のメディアアートー」や「AIってどう使う?家庭で始めるデジタル時代の教育」など、メディア・テクノロジーと子どもたちについてテーマにしています。

また、研究活動にも一層力を入れて、メンタルヘルスや地域の観点からSDGsに取り組んでいきます。

この記事を書いた人
執筆者

メディアアーティスト、研究者、教育者、公認心理師。主にSDGsの達成目標3「すべての人に健康と福祉を」、達成目標4「質の高い教育をみんなに」に取り組む。

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