食事制限ある人にも意識を-北陸中日新聞に掲載されました

食事制限ある人にも意識を-川北輝-SDGs活動報告

2022年5月13日の北陸中日新聞、【発言】に私の書いた文章が掲載されました。これは、食に関するSDGsの観点から書いたものです。

食に関するSDGsといえば、達成目標2の「飢餓をゼロに」や食品ロスの問題などを思い浮かべる方が多いと思います。また、人口増加による食糧危機の観点から、代替肉や培養肉を連想される方もいるかもしれません。

今回、私が新聞に投稿した内容は食に関するSDGsの中でも、マイノリティの視点に着目しています。

記事の内容について

日本語

実際に掲載された内容を次に示します。

『食事制限ある人にも意識を』

 数年前、義母は甲状腺の病気にかかりました。それ以降、ヨウ素を制限した食生活を送っています。

 ヨウ素は昆布などの海藻類に多く含まれています。また意外なことに、私たちの生活に身近なみそやしょうゆ、すし酢にも海藻由来の成分が含まれています。そのため、義母は調味料の使用を制限した料理を食べなければなりません。そしてどのような調味料を使用しているのかが分からないため、自由に外食することさえ困難な状況が続いています。

 2030年までに17のゴール・169のターゲットの達成を目指す、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) の基本理念は「誰一人取り残さない」ことです。食に関するSDGsというと、飢餓やフードシステム、カーボンフットプリントなどに着目する方が多いと思います。

 しかしヨウ素の制限やアレルギーなどによって、食の楽しみが制限されている人たちがいることにも意識を向ける必要があります。

出典:[1]

English

この内容を英語に翻訳すると、次の文章になります。

Several years ago, my mother-in-law had a thyroid disease. Since then, She has not eaten any food containing iodine.

Iodine is abundant in seaweed such as kelp. Surprisingly, miso, soy sauce, and sushi vinegar, all of which (traditional Japanese seasonings) are familiar to us, contain ingredients derived from seaweed. Therefore, my mother-in-law has to eat food with limited use of seasonings. She also avoids eating out because she does not know what seasonings are used.

To achieve 17 goals and 169 targets by 2030, the basic principle of the United Nations Sustainable Development Goals (SDGs) is to leave no one behind. In the SDGs on food, people consider issues such as hunger, food systems, and carbon footprints.

However, we also need to pay attention to the fact that some people have limited enjoyment of their food due to iodine restrictions and allergies.

※It was published in a Japanese newspaper (The Hokuriku Chunichi Shimbun)

Author: Teru Kawakita

マイノリティ視点からも考える

新聞記事を通して最も伝えたかったことは、マイノリティ視点からも食のSDGsを考えていかなければならないということです。

「達成目標2: 飢餓をなくそう」では、2030年までに飢餓をなくし、世界中の人々が十分な食べ物を得ることができるよう、持続可能な農業を進めていくことが掲げられています。

しかし、単に健康的な栄養状態を目指せば良いのではなく、食事の過程 (質) にこだわることも大切です。

料理を楽しみながら食事ができるかどうかによって、生活の質にも影響が出てきます。楽しみながら食事をするためには、まず料理が美味しいことが重要です。美味しさは食事を継続するためのモチベーションであり、人によって感じ方も異なります。また、美味しさの基準は文化や食習慣によっても異なります。

とはいえ、料理を美味しくするためには調味料を使用することが効果的です。調味料によって食材の魅力をさらに引き出すことができます。

一方で、新聞記事にもあったように、ヨウ素の制限やアレルギーなどによって特定の調味料や食材を料理に使用することが極めて困難な方々もいます。そして、それぞれが工夫して快適な食生活を目指し、取り組まれています。

しかし、実際に本人は食の楽しみを制限された状態に置かれています。

では、その方々に私たちができることは何でしょうか。

医療や科学技術の発展によって、制限を取り除くことを目指すという選択肢も考えられますが、より身近にできることとしては、美味しさの演出が挙げられます。

人が料理の美味しさを感じる要因には、味 (五味: 甘味、酸味、塩味、うま味、苦み) のほかに、健康状態や感情、食器の美しさ、部屋環境、対人関係など様々なものがあります。特に誰と食べるのかは、重要な要因です。これらの味以外の要因によって、美味しさを演出し、より快適な食生活を送る手助けをすることが大切だと考えられます。

食とSDGs

農林水産省 [2] は「食品業界の積極的な参画を得られるよう、実践的にSDGsに取り組んでいる食品事業者の取組を中心に、SDGsと食品産業のつながりを紹介」するためのページを立ち上げています (興味のある方は、こちらをご覧ください。)

引用文献

[1] 川北 輝 (2022). 食事制限ある人にも意識を 北陸中日新聞, 5月13日朝刊, 5.

[2] 農林水産省 (2022). SDGs×食品産業 Retrieved from SDGs×食品産業:農林水産省 (maff.go.jp) (2022年6月3日 閲覧)

この記事を書いた人
執筆者

テクノロジを活用したメンタルヘルス支援研究や感性工学研究に従事。主にSDGsの達成目標3「すべての人に健康と福祉を」、達成目標4「質の高い教育をみんなに」に取り組む。

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