先日、大学院の講義で「問題意識を向上させて実践につなげられるプロジェクトを実施する」という課題があり、私は卵の殻からチョークを作ることに取り組みました。
今回は卵の殻からチョークを作ろうと思った経緯と、実際のチョークの作り方についてまとめます。
チョークの作り方だけ見たい! という方は、目次から「SDGsチョークの作り方!」をクリックしてみてください!
卵の殻とSDGs
身近なところから問題意識を持つ
最初に、「グローバルな問題に対して、私たちが取り組めることは何だろうか?」、「生活に関連する身近な問題で、私たちが取り組めることは何だろうか?」と考えました。
そのとき思いついたのが、食品ロス問題です。
農林水産省 [1] によると、日本の食品ロスの量は年間570万tであり、そのうちの46%は家庭から出ています。
この食品ロスの問題に対して、身近なところから取り組もうと思ったのですが、我が家では基本的に食材を無駄なく使っており、賞味期限や消費期限のチェックもしているため、食品ロスのリスクがほとんどありませんでした。
そこで、調理の際にどうしても捨てざるを得ない部分に着目しました。
それが、卵の殻です。
卵の殻は食用として適さないため、多くの人が調理の際に捨てています。この卵の殻を有効活用して、少しでもサステナビリティに貢献できないだろうかと考えました。
どれぐらいの人が卵の殻を捨てているのか
卵の殻は多くの人が何気なく捨ててしまっていますが、年間の廃棄量を考えてみると相当な量になるのではないでしょうか。
International Egg Commission [2] によれば、2020年の日本の卵廃棄量は1人あたり340個です。
卵の殻の重さを10gとすると、年間1人あたり3.4kgもの卵の殻を捨てています
卵の消費量は今後、まずます増加すると予想されるため、卵の殻の問題は何とかしなければならないといえます。
卵の殻を活用するにあたって、既に取り組まれている企業等について調べました。
卵の殻に関する企業の取り組み
卵の殻の有効活用に関して、先駆的に取り組まれたのが「愛は食卓にある」でお馴染みのキューピー (kewpie) です。
キューピーマヨネーズ [3] は、1950年代から卵の殻の再生利用の取り組みを開始し、カルシウム強化食品や土壌改良剤、肥料などに活用しています。
また、卵の殻の内側の0.07ミリの卵殻膜も、化粧品や食品の原料として使っています。
まさに一切の無駄なく卵を活用しており、SDGsの達成目標12「つくる責任 つかう責任」を果たしている企業だと考えられます。
そして、SAMURAI TRADING INC. も、卵の殻を用いた画期的な取り組みをしています。
これまで石油由来の樹脂にお米・タルク・木などを配合したプラスチック製品は存在していましたが、可燃ごみにするためには全体の51%以上が自然由来である必要があり、安定的に製造することは困難でした。
当社 SAMURAI TRADING では、独自のパウダ―加工技術でたまごの殻 (卵殻) 60%とポリプロピレンなどのプラスチック40%を混ぜ合わせることで卵殻扱いになるため、燃やせるごみとして使用可能なバイオマスプラスチック【PLASHELL(プラシェル)】を開発しました。
SAMURAI TRADING INC. [4]
このように、卵の殻を活用し、SDGsに貢献する企業が増えています。
SDGsチョークの作り方!
では、“大人も子どもも、より手軽に家庭で楽しむことができる” 卵の殻の活用法とは何でしょうか。
その一つとしてチョークが挙げられます。
卵の殻の成分の多くは炭酸カルシウムであるため、チョークの材料として活用することが可能です。
チョークを使う機会は限定的ですが、100均でも買える黒板 (ブラックボード) 等に絵を描いて楽しむことができます。
※チョークを作成する際は、念のため卵アレルギーの方が近くにいないかどうか配慮してください。また、粉末を吸い込んでしまったり、直接肌に触れたりすることがないよう、気をつけてください (皮膚についたものが原因となり、アレルギーになる可能性もあります)。
卵の殻で手を傷つけてしまう恐れもあるため、軍手や長袖の服を着用しておくと安心です。
ステップ1: チョークの型作り後、卵の殻を細かくする
チョーク作りに必要な材料
- 卵の殻 (卵殻膜は剥がす)
- セロハンテープ(マスキングテープでも可)
- 厚紙 (画用紙)
- クッキングシート
- 小麦粉
※手回しのコーヒーミルなどがあると、卵の殻をすり潰す際に便利です!
※その他、袋やはかり、漏斗などがあるとチョーク作りがよりスムーズになります!
チョーク1本あたり、卵の殻3個をすり潰したものと小麦粉3g、水6gで作ることができます。しかし、卵の殻のサイズによっては、小麦粉や水の必要量が変わってきますので、微調整してみてください。
私はスーパーで購入したMサイズの卵を使いました。
最初に、画用紙とクッキングシートを丸めて、チョークの型を作ります。画用紙を太いボールペンなどに巻いて、筒状の形を作ってあげるとセロハンテープでとめやすいです。
私はセロハンテープの代わりに、余っていたネームラベルを使いました。
次に、卵の殻を何かの袋に入れて、ある程度粉々にします。
卵の殻を粉々にする際は、辺りに飛び散ってしまわないよう、注意が必要です。砕いた破片はわりと尖っているため、袋に穴を開ける恐れがあります。
卵の殻をある程度の大きさまで砕くことができたら、次は手回しのコーヒーミルでさらに細かくすり潰しましょう。
手回しのコーヒーミルがない方は、すり鉢等でも代用できますが、粉末状レベルまで細かくしないと完成後のチョークが折れやすくなってしまいます。
ステップ2: 材料を混ぜて型に入れ、乾燥させる
卵の殻をパウダー状になるまですり潰したら、次はそれを小麦粉や水と混ぜます。
もし「水の量が足りないかなぁ」と感じたら、小麦粉1gと水2gを追加してみてください。
混ぜ終わったら、さきほど作ったチョークの型に流し入れます。
このとき、100均の漏斗があると便利です。漏斗がない場合は、丁度良い大きさに切った画用紙の真ん中に折り目をつけて、そこにクッキングシートを貼り、簡易的に流し込めるものを作っても良いと思います。
すべての型に流し終えたら、しばらく放置します。私は6月に、2日ほど放置しました。
カビや変色を防ぐために、高温多湿は避けて置いた方が良いと思います。
ステップ3: 乾燥待ちの間にラベルを作る
完成したチョークにオリジナルのラベルをつけると、達成感や満足度がグッと上がります。
お子さんの描いた絵をコピーして使ったり、好きな写真を使ったりしても楽しいです。
私は次のようにラベルを作って、チョークに巻きました。
そして、実際に完成したものがこちらです! Youtubeに動画をupしたので、ぜひご覧になってみてください。
SDGsチョークの今後
SDGsチョークは、捨てられるはずだった卵の殻を使用して作っているため、自然環境に良いと考えられます。
一方で、上記で説明してきた材料だけでは多彩な色を出すことができません。
多彩な色を出すためには、食用色素などを使う必要があります。
では、他にもっとサステナブルな方法はないでしょうか。
例えば、ニンジンやキャベツの皮をパウダー状にして、チョークの材料に使えば、薄いオレンジ色や薄い緑色のチョークができるかもしれません。
実際、mizuiro株式会社 [5] は、米油やライスワックス、野菜のパウダーから作った“おやさいクレヨンstandard”を販売しています。捨てられるはずだった野菜を活用した素晴らしい取り組みです。
また、余ったコーヒーの粉末をチョークの材料に使えば、茶色のチョークができるかもしれません。
ぜひ、「卵の殻のチョーク×何か」で、よりサステナブルなSDGsチョークを作って、楽しんでみてください。
引用文献
[1] 農林水産省 (2019). 食品ロスとは Retrieved from https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html. (2022年7月29日 閲覧).
[2] International Egg Commission (2022). Global egg production grows by 3.5% Retrieved from https://www.internationalegg.com/resource/global-egg-production-grows-by-3-5/. (2022年7月29日 閲覧).
[3] キューピーマヨネーズ (2022). 卵はムダなく使っています Retrieved from https://www.kewpie.co.jp/mayonnaise/tips/efficient-use.html. (2022年7月29日 閲覧).
[4] SAMURAI TRADING INC. (2020). PLASHELL Retrieved from https://www.samurai.vip/product/plashell. (2022年7月29日 閲覧).
[5] Mizuiro株式会社 (2022). おやさいクレヨン Retrieved from https://oyasai-crayon.com/. (2022年7月29日 閲覧).